ライチョウブログ

サイト管理人のブログです。

掲載されている画像、動画は基本的には登山道から撮っています。

調査研究の一環として特別な許可を得て、登山道外に立ち入っているデータについてはその旨記載します。

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ライチョウにも転勤があるんですね

 全然、まったく更新をしていない管理者黒五の身に何があったかというと、サラリーマンの宿命、転勤があったのです。
 一か月間、ストレスの海に浮かんで、ようやく自分を取り戻してきたところです。

 ご存じのように転勤とは、今までの人間関係を強制リセットし、知らない土地、知らない人、なじみのない仕事に触れさせることで、本人の成長を促すんだか企業内の風通しを良くするんだか、真偽不明の良い効果がでるとされる日本独特の奇習ですが、それで飯を食っているので文句も言わずにハイ喜んでーと素直に従っているあたり、黒五も立派なサラリーマンです。

 で、折も折。

 乗鞍のライチョウを中央アルプスに移送したんだとかいうニュースが飛び込んできまして。

 へー、ライチョウにも転勤あるんだぁ。。。と同情してしまった次第です。

 中央アルプス駒ケ岳の個体群が極小化したのは、いろいろな要素があるにせよつまり「キャパシティがない」ということですから、これがサラリーマンなら「君は新規事業開拓のために××国○○州△△郡に赴いてもらう。過酷な環境ではあるが、わが社の将来のため頑張ってくれたまえ」なにが”たまえ”だ馬鹿野郎といったところではないかなと思うわけです。

 減った理由が、高山にサルがいるからにせよ、食料が減ったからにせよ、原因を解決しないで、いたいけなライチョウの親子を3組も移送したと。

 お役人さんも転勤が多い職種です。自分たちと同じ感覚でライチョウを転勤させたかどうだかわかりませんが、転勤についていく奥様子供たちの気持ちも考えてみてください。

 いやでしょう?

 ライチョウのためと言いつつ、やっていることはライチョウに苦痛を強いているものではないかと思います。

 ライチョウはサラリーマンではない、ましてヒトではない。ライチョウの立場に立って、ライチョウの目線で自然を見なければ、ライチョウの減少は止まらないのでしょう。

夏至

夏至を過ぎると途端にやる気が失せる雄ライチョウ

 夕方7時ぐらいまで明るい季節ですが、関東は肌寒いです。しかし、雲が晴れれば一年で最も強い紫外線が降り注ぐので要注意。
 現在、ライチョウの雌は卵を抱いています。雌は一日4回ほど巣を飛び立って、せわしく食事をし、糞をし、巣に戻る。この間10数分。

 で、この間、雄が何をしているかと言いますと。

 雌が卵を抱いている間は見張りをしていますが、雌が食事に飛び立つとそのあとを追従します!

 ということは、雄を見張っておれば雌が見つかるわけですが、そうは簡単にいきませんで。

 まず、雌が一日約4回巣を飛び立つというたったそれだけの事実を突き止めるのに、3年ぐらいかかっています。だって、梅雨の高山寒いんですよ。逃げ場ないんですよ。足の指もげるかもって思うぐらい寒いんですよ。そう。下で雨が降っているということは、上は雲の中です。

 それから。雲の中ですから。
 雄が、「グゥオッ ががー」と、変な声(ライチョウの雄の声は変です。本当に変です)をあげて、バッと飛び立った、追いかけた、、、いない。
 濃霧の中で見失うのです。なぜか、普段飛ばないくせに、この時は飛びます。

 仮にうまく雄と雌を発見したところで。雌も所用が済むと飛ぶのです。
 巣を見つけられたくないからか、はたまた急いでいるからか。真相はわかりませんが、都合数十メートル霧の中で謎の飛翔(ジャンプ)を行うので、観察者はたまったものではありません。
 標高高いところで、がちがちに冷え切った体で瞬発力なんか出ません。

 そんなこと、誰も教えてくれなかったじゃない! というようなこと、世の中にはごまんとありますが、ライチョウが霧の中で飛んで移動するなんて、それこそ誰も教えてくれません。
 上司が、先輩が教えてくれなかったからとか言ってる新米の皆さん。かよう、この世は理不尽です。びっくりを楽しみましょう。

梅雨入り

梅雨の雄

 ライチョウの場合、おおむねGW頃から縄張りの形成が始まって、卵を産み始めるのが梅雨入り頃になります。ライチョウの場合と書きましたが、大体野鳥全般に言えることではあります。

 ウズラで詳しく研究されていますが、長日条件によって雄の性ホルモンの分泌が高まると、攻撃性が増します。繁殖期のカラスなんかも人間をつつき出しますよね。

 結果として、ライチョウの雄は雌に対しては性衝動を、雄に対しては攻撃性を発揮するのです。縄張りを形成するというよりも、より攻撃性の高い雄は結果として広い縄張りを維持することになるのだと思われます。
 そして、夏至(6月20日ごろ)を超えると、ホルモンは抑制されていき、なんだかボーっとした鳥になります。あれだけ粘着質に他の個体を追い回していたのに、もはや日曜日のパパ状態です。

 というわけで、鳥がさえずるのも、踊るのも、羽を換えて着飾るのも、肉冠が真っ赤になるのも「太陽がまぶしかったから」なのですが。

 日本だと梅雨で、ちょっとわかりにくいですね。。。

 ちなみに鳥は眼だけでなく、脳で光を受容しているようです。目をつぶってても、頭皮を通して脳が長日短日を検知します。
 もちろん、哺乳類はできません。すごいですね、鳥。

いとしのMr.Blue

 とはいえ。

「お前等じゃあ何ができんだよ」という意見もごもっともなのです。

 一つ答えられるとするならば、小池都知事がおっしゃったように「お願いをさせていただく」ぐらいでしょうか。

 何を、と言えばできるだけ地球温暖化にブレーキをかけるような生活を心がけるです。

 今回のCOVID-19の問題でわかったことは、日本人(日本国内に住んでいる人という意味で、人種は問いません)はやはりよく言えば協調性のある国民性、悪く言えば同調圧力の強い国民性だと思います。

 悪い方向へこの特徴が出ると、自粛警察だとかいじめの問題が出てくる。良い方向に出てくれば、災害をなんとか乗り切ることができる。

 が、なぜか、環境問題に関して言えば、この性質が少しなりを潜めます。主張は様々ですが、たとえば「経済と科学技術の発展が最優先」とおっしゃる方もいます。

 それは私もそうであってほしいと願いつつも、「でも、私たちはこの複雑怪奇な地球環境というモノに生かされているのだから、それを大事にする気持ちを持つと、もっと幸せに暮らせるんじゃないでしょうか?」と言葉を添えるのです。何を優先するかはその人の自由ですが、ベースには地球があるのです。

 もう一つには、私たちが生活インフラが必要なようにライチョウにもインフラが必要です。ここに着目してはいかがでしょうと提案できます。

 環境省の方々はシカの問題やクマの問題について、人と獣の間に立って、妥協点を探る努力をずっと続けてこられました。しかしライチョウに関しては人との対立がないので、増やすことしか考えられなくなってしまっているように思います。

 下界で繁殖させようが現地飼育しようが、ライチョウが帰るべき自然のインフラ整備は必要です。

 高山の登山道を雨の日に歩いたことはあるでしょうか。まるで川の中を歩くようです。登山道が水の通り道となって、高山植物の土台になる土壌を浸食しています。ライチョウの採食植物、営巣環境も(全部とは言いませんが)登山道の浸食で失われているかもしれません。私が研究していた上ノ岳もずいぶん登山道の浸食が進み、まるで滝のようになっている。ずっと昔に作られた木の堰堤も為すすべがないようです。

 私たちはライチョウに必要な環境とは何か、ずっと調べ続けています。それによって、登山道はどこを通すのが良いのか、どう整備すべきか、明確に検討できるでしょう。ライチョウの為にインフラ整備する事が、国民のために豊かな自然を残すことになるのです。

アダムとイブ

 中央アルプスでライチョウが見つかったり、白山でライチョウが見つかったりしている…というのはなかなか興味深いのですが、彼らの個体群がもしも存続しているとしたら、あれらの山域の私たちに見えていないどこかに、少なくとも成熟した雄雌が何十羽もいるのではないかという話になります。

 でなければ、誰かがこっそり移送しているかです(かなり手間ですが)。

 確かに鳥は長生きです。オカメインコも環境さえよければ20年生きます。野生生物の寿命を調べるのは困難ですが、しかし、木曽駒ヶ岳で発見された個体が何十年も生きているということは考えづらいです。

 見かけなくなったということは、それなりに数が減っているのではないか。ということは、健康で長く生きられる環境ではないだろうということです。

 仮にもし見つかった個体が1羽で、それが最後の1羽だったら、地域絶滅を免れていたと言えるでしょうか?

 日本のトキの最後の一羽のことを思い出してみてください。あの時、議論になったように、つがいが居なければ種として存続できないのでアウトです。

 では、雄雌の二羽がいれば復活できるのか? アダムとイブとして、子孫を残し、その後繁栄していくでしょうか?

 もう一度、トキの話を思い出してみると、日本のトキが絶滅したのは、日本の水田環境に依存的だったためでした。水生生物や虫の少ない効率的な稲作を行ったから減ったとするなら、トキの復活と旧来の稲作とワンセットで行って、初めて「再導入」に至ったのです。

 ライチョウで同じことはできません。ライチョウが依って立つのはライチョウとともに日本に取り残された周北極地域の自然だからです。これは、私たちが作ったものではありませんが、私たちの活動が影響を及ぼした可能性はあります。ライチョウ保護とは日本の高山生態系保護そのもののことです。

 中央アルプスに、他の山岳から有精卵を持ち込んだとして、それが孵化して定着しても、増えることはないでしょう。数が増えても、それを養える環境がなければまた減るのです。単に元の山岳のライチョウ個体群と中央アルプスの環境にダメージを与えているだけです。

 環境省もこの不合理をわかっていると思うのです。しかし、何かやらなければならないから、仕方なしにやっている。だとすれば、山を守る人たちは、そろそろこのことを怒らなければいけないと思うのです。