NPO法人 ライチョウ保護研究会の設立にあたって
人という生き物は、自然の恩恵を受けながら、加速的に増加し続けてきました。氷河期の生き残りとして知られるニホンライチョウは、高山帯の過酷な気象条件に適応進化し、生存してきました。でも、いつしか3000羽とも言われる個体数にまで減少してしまいました。(3000羽という数字にはしっかりとした科学的な根拠がありません。少なくとも1万羽ではなくて、数千のオーダーであろうという程度にとらえてください。個体数を調べることは大変です。個体数と同時に大切な情報は、分布の連続性、集団間の交流の範囲と遺伝子の多様性の問題です。まだ手つかずの研究課題となっております。)
野生生物の生存を脅かす主な要因として、生息地の破壊、乱獲、環境汚染、帰化生物の侵入などが挙げられます。現在、特別天然記念物に種指定されているニホンライチョウは、乱獲の心配はなくなりました。しかしながら、生息地における人為的攪乱は、生態学的秩序を乱すこととなり、ニホンライチョウの種の存続に大きな影響を及ぼすことになります。
環境問題に対する対策の基本は、人々が自然のメカニズムに対して理解を深め、自らの行動を律することにあります。ニホンライチョウの棲む精妙な世界は、特にこの考え方が強く要求される世界です。
われわれは、現在の生活を犠牲にすることなく、先に生を受けたものとして子や孫に素晴らしい自然を受け継ぐ義務を持っています。そのためには、生物間相互作用に秘められた自然の持つ素晴らしい構造機能を改めて見つめ直す必要があります。(「知識を持って自然を見ると景色が違ったものに見える」と言います。素晴らしい言葉ですね。)
この「ライチョウ保護研究会」の設立を希望する発起人一同は、自然とふれあい自然をこよなく愛するものであると同時に、科学的な体系的知識を持つことを望むものです。これまで数十年間にわたり、ニホンライチョウの生態、生息環境の生態系について保全生物学的な視点から調査研究を行ってきました。その結果を踏まえ、山岳関係者、自然愛好家、山小屋関係者、行政機関などと合意形成を図りながら、自然の保護・保全に努めてきました。この活動をさらに推し進め、子や孫に素晴らしい自然を残すために、特定非営利活動法人「ライチョウ保護研究会」を設立します。
平成15年5月6日、会の設立時の発起人一同の声です。