大体15年ほど山に登ってますが、雪山はやりません。
残雪の山でライチョウさんを調査していたぐらいで、できれば雪は避けたいとこです。
が、2018年の10月は降られました。
この写真(下手というかなんというか。。。)を撮った前日にすでに雪が降ってまして。まあ、これなら大丈夫だろうと思っていたら、翌日も降りました。
下界は紅葉。薬師岳は、雪。
秋だけど、雪。
東北生活を5年ほどしていたので、雪自体は怖くないのですが、それでも「山で」となると緊張しました。
しかし、ライチョウにとっては、これが普通の景色なのかもしれません。季節の感覚も、下界の私たちとは異なるでしょう。
冬前のライチョウ
そんなこんなで、今年の秋は富山県の太郎山に行けませんでした。
行こうと思えば行けたんでしょうけど、長野がアレでは帰ってこれなかったです。また、近年はベテランの方が山でご不幸に遭われているので、無理は禁物です。
さて。埋め合わせは去年の薬師岳閉山祭の時に、薬師岳に登ってきた時の動画です。
ご覧ください。雪です。
ありとある、すべての服を着こんでも、氷点下。
そんな中でもライチョウさんは元気です。
つつきまわしているのはハイマツの実です。食ってるかどうかは判然としませんが、私はハイマツにライチョウがかかわっているのを初めて見ました。
実、食べれるんですかね。
10年以上見てても、発見があります。
台風の爪痕
栃木県某市が被災して。たまたま私はそこの事業所の経理をやっていて。必然的に出張で行くわけですが。
着いてみれば河川敷に流木、土砂、ゴミ。洪水(砂防用語で洪水と言ったときは、普段より多い水量という意味です)の凄まじさがわかります。
幸いにして知り合いは無事、とはいきませんでした。床下浸水、床上浸水、車水没。心からお見舞い申し上げます。
帰りに、土手で犬の散歩をしていたおばさまに捕まり(私は見ず知らずの人に話しかけられる率高いです。野生生物を目撃しやすいのと無関係ではないかもしれません)、いやーすごいですねー、としばらく話し込んでしまいました。
渡良瀬川は、カスリーン台風で決壊しており、今回はどうだろうと冷や冷やしていたんですが。
「ほら、Kダムができたじゃない。そのおかげよ」某市民的にはKダムに感謝しているらしいことがわかりました。
Kダムって、うちの大学の演習林のとこだなぁ。なんだか懐かしくなります。
私達は自然が荒ぶる時とても無力です。砂防堰堤も、遊水池も、高規格堤防も、今回は耐えた。これらの砂防構築物は確率的に300年に一度(計画にもよりますが)という洪水に備えています。
確率的に、というのは過去のデータから…ということです。これから300年に一度のすごい洪水は100年に一度になってしまうかもしれない。10年に一度になってしまうかもしれない。
「天気の子」という映画がヒットしました。遠くない未来にあんな世界になってしまうかも知れませんね。
予防原則
大学では林学を学んでいましたが、とりわけ砂防関連の授業は印象的でした。各地の砂防堰堤や堤防を見学に行った中で「脱ダム宣言だとか、300年に一度の洪水の為の堤防なんか要らないと言われるけれど、ひとたび大水が出たならこれが何万人もの人の命を守るんです」、と。現場の方が仰っていたのが印象的でした。
今回、荒川も利根川も溢れなかったのは、八ッ場ダムのお陰だけでもないでしょう。数多くの砂防堰堤が土砂や流木を上流にとどめて水だけを下流に速やかに流してくれたのです。江戸時代の人たちが、荒川放水路を造ってくれたから、都心部は守られたのです。沢山の人達の100年の努力が無かったら、私も生きてはいられませんでした。なにしろ、利根川、荒川、多摩川が決壊すれば、関東平野のどこにも逃げ場はないんです。
予防、というのは安全の基本です。山でも「危険に出会ったら」より「危険に遭わない為に」多くの勉強をします。
今後、温暖化の進行に伴い、このようなスーパー台風がやってくる頻度は高くなると予測されています。「温暖化仮説は嘘だ」と賢しげに言って何もせず、温暖化の影響が出始めて、それから対策したのでは持続可能な発展など望めもしないでしょう。
予防することです。
コンビニでマイバッグを取り出すのが恥ずかしい? そんなこと言ってる場合ですか。できることから、コツコツと、です。
台風の思い出
富山(調査地)に行こうと思ってると台風がやってくるという…平日に来てくれればいいのに。
忘れもしないといいつつ何年前だったか、5年前? 6年前? 9月に富山県有峰の太郎平小屋にお邪魔したところ、台風直撃で。私自身は風雨は気にならないんですが、有峰林道が雨で通行禁止になると帰れないので、ザーザー降りの中、頑張って下りまして。
無事、下りたはいいものの、北陸道が途中で閉鎖。
新潟から黒くうごめく濁流の姫川沿いを、崖の上のポニョよろしくな状況で南下し、ほうほうの体で抜けたことがあります。
長野市あたりに着いた頃には台風一過の青空でした。
「そう言えば、山小屋で台風経験したことないですね」と今年の6月に小屋で話していたので、タイミングが合えば嵐の高山の模様をぉとどけできるのですが。台風の進路と速度次第です!
日光のサル軍団
中禅寺湖一周苦行の旅動画第二弾。
サル軍団です。
道中に人糞のようなフンが結構落ちていたので、これはサルだなぁと思っていたら案の定。
逃げずにこちらを見てるのがボスなんでしょうか。サルと喧嘩なんかしたくないので、速やかに立ち去りました。
この地域、まあまあ結構な頻度でサルを見かけますし、場合によってはこうして包囲されます。
間違っても餌をあげたり威嚇したり手を出してはいけません。ここは彼らの領域です。
シカの授乳
中禅寺湖一周苦行の途中。割と序盤でシカの親仔に逢いました。
こんなに大きくなってもお乳欲しがるんですね。でも、お母さん嫌がって早めに切り上げられちゃった感じです。
このあたりの植生は下層植生がほとんどありません。
かなりの密度でシカが生息しているものと思われます。
あまり人を怖がる風でもないので、追われたことがないのでしょう。
というわけで、この中禅寺湖一周の苦行中、シカ一回、サル二回、リス二回見ました。まだまだケモノ寄せスキルは衰えてません。
奥日光の自然
日光東照宮から、いろは坂を登ったところにある中禅寺湖は標高1,269mです。
日光市街が標高約600m、華厳の滝を挟んで中禅寺湖が標高1,269m、竜頭の滝を挟んで戦場ヶ原が1,400m、湯滝を挟んで湯ノ湖が1,475mと、湯川に沿って滝毎に段々になっています。
高標高の湖で、寒冷な気候も手伝って貧栄養の湖ですので、元々魚はいなかったようですが、明治以降に持ち込まれたようです。(当時は生態系の攪乱なんて概念は無かったのですね)
一周25kmのこの湖を、私は8時間で踏破します。修行です。修行。頭を空っぽにして歩くにはちょうどいいんです。
特に南岸部はうねうねとした岬を回る退屈な山道で、全体の半分以上がそんな調子なので、すれ違った人も数名、といった具合です(それも一周する人はいないのでは)。
見どころは、この写真のように湖越しの男体山。それから、クリンソウが咲く千住ヶ浜の辺りです。
ひさびさに行って(3年ぶり?)少し驚いたのは、湖周辺で数多くの観光開発が行われていたことです。なるほど。日光駅から湯ノ湖に至るまで、T鉄道さんがバスでつないでいるし、東京から日光までは電車で容易にアクセスできる。多くの海外からのお客さんを呼び込めますね。
日光一帯の自然は寒冷な気候が生み出した景観です。標高が100m上がれば平均気温が0.6℃下がるというのが、私の学生時代からの常套句ですが、日光市街と中禅寺湖では3.6℃も差があるんです。
戦場ヶ原は4.8℃も低くなります。だから貧栄養の湖や高層湿原ができるのです。
温暖化したら高層湿原の有機物分解速度が上がって湿原が消え、中禅寺湖の透明な色も失せるかもしれません。
気候正義
9月23日ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで、スウェーデンのグレタ・トゥンベリ氏(16歳)が演説を行いました。
NHK NEWS WEBにその全文和訳が掲載されていたので、読んでみました。
「私たちは大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」
出だしの辺りが人々の心をわしづかみにしてくる意欲的な演説だったようです。
内容としては、彼女のようなティーンエイジャーの立場から、地球温暖化の問題を先送りにし、あまつさえ若者にその解決を押し付けようとしている「現在の大人たち」への非難し、今すぐ解決せよとアクションを迫るものです。
彼女の主張は世代間の不平等を訴えている側面があります。
また、二酸化炭素の排出に関して言えば、二酸化炭素を大量に排出しているのは世界の中でも裕福な国々で、途上国は排出していません。
けれども、どんな世代もどんな地域の人も地球温暖化によってさまざまな不利益を被ることになります。
これは不平等ですね、という立場に立つのが気候正義(気候公平性)です。
もちろん、ライチョウを含めてあらゆる生物に拡張しても良いと私は考えています。
私が地球温暖化の問題に初めて触れたのは、学研のまんがサイエンス(あさりよしとお)で、それが90年代半ばのことなのです。そこから地球温暖化の問題は解決したかと言うと、全く解決せずに、排出量はどんどん増えていったのです。
じゃあ、どうすればいいのか、どうしたらよかったのか。
この点について、この日本という国はほとんど無策だったのかもしれません。野生生物の話で申し訳ないのですが、シカが問題だ、クマが問題だと比較的卑近な環境の変化には敏感に騒ぐものの、『地球』温暖化というと、途端にふんわりとしてしまいます。なんだか、北極の氷が解けるような、遠い国の氷河が消えるような。そんな感じなのかもしれません。
温暖化懐疑論というものがありまして、私も一時期懐疑論について多く調べていましたが、しかしながら懐疑論では近年の気候変動を説明できないのです。
ここ数年でその流れが変わってきたのかもしれないと思うのは、集中豪雨や台風の害が甚大化してきた後に、温暖化の影響と説明がつくようになってきてからです。
もっと早くにライチョウはその影響を受けて、数を減らしていたかもしれないのですが、やはり他人事で、実際に自分たちの喉元にナイフを突きつけられるまで、当事者意識というのは生まれないものかもしれません。ライチョウはいち早く温暖化の影響を受ける生物ですが、ちょっと身近さが足りなかったのではないかと思います。
とはいえ。ライチョウの生態をもっと追及することは、地球温暖化に対して「具体的な」アクションを迫るグレタ氏の意見を補強する物であります。
具体的にどうしたらいいのか。
脱プラスチックを叫ぶなら、タピオカ飲んでる場合じゃないのです。
働き方改革を叫ぶなら、とっとと帰らなければいけません。
Think globally, act locally
一人でも多くの人がそうすれば、大きなムーブメントが出来上がります。
ライチョウのフン
9月の或る日のこと。
野生生物を扱っていると、たいていフンを扱うと思われる。シカのフン、クマのフン、ライチョウのフン…となると自分のフンのチェックだって欠かさない。
いつものように流す前に色形をチェックしたところ。
黒い。
説明しよう。自分のウンコの色が、茶色~黄色ぐらいは正常である。
白、黒、赤はいけない。
白いのであれば、胆汁が出ていない。
赤いのであれば、大腸の下部で出血している。つまり痔である。
黒。これもまずい。消化管の上部で出血している場合がある。
胃がんか? 大腸がんか? ああ、保険はいっとけばよかったなどと、頭の中で一通り考えを巡らせたのち。
うん。昨日はイカ墨スパゲッティをおいしくいただいたんだったね。
このように。フンは食べているものによって色形が変化します。
ライチョウの場合も顕著で、写真の紫のフンは紫のものを食べたからで、緑のものを食べると緑のフンが出てくる。ふざけてなんかいない。本当である。ライチョウだってイカ墨を食べたら黒いフンが出るに違いない(そんな日は来ないと思いますが)。
今ぐらいの時期、ライチョウはクロウスゴ、クロマメノキ、ガンコウランなどの果実を積極的に採食します。結果、糞はその種と色味が出てきます。春先はガンコウランの旧葉などを食べているので、硬くて茶色いしっかりしたフン。夏の間は柔らかい葉を食べるので緑色のフン。そして、秋には紫になるのです。
現在、中部大学にて、ライチョウのフンからDNA解析で食べたものを突き止められないかという研究が進行中です。
ライチョウの口元を撮影するのは正確ではありますが、見えてないところで何を食ってるかわかりませんので、そこはこういう研究がカバーしてくれるものと思います。