活動報告をアップしました

COVID-19のせいでなかなか山にも入れず、県境も跨げずともどかしい期間でしたが、それでも中部大学で学生と先生たちは頑張ってくれています。

一方で、やはりライチョウを中央アルプスで飼いたい人たちは居るようで。

中央アルプスでライチョウが生息できるのは千畳敷カール周辺の限られた地域のみで、そこに移植したとして、そこで檻で囲ったとして、ライチョウを保護したことにはならないと考えています。誰も檻を見回らなくなったら? キャパシティに対して増えすぎてしまったら? 増えたライチョウが高山植物に高い採食圧をかけてしまったら? 同じ親から産まれた子同士で繁殖しても弱い子供しか産まれないって聞いたけど?

そういう素人考えでも色々思いつくのにさらに専門的に突っ込んでくださった論文を先日ご紹介しました。もいちど貼ります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/advpub/0/advpub_2031/_article/-char/ja/

日本生態学会の発行物です。ここに載っているということは、みんなちょっと考えましょうよ。

正直、ああ、良かったと思いました。真剣に考えてくださっている方たちがいたんだと、とても勇気づけられました。生態系というものを、そして野生生物保護を真剣に考えてくださっている先生たちはあのプロジェクトには近づかないでしょう。

本当にしなければいけないのは、私達がライフスタイルを見直し、企業が持続可能な経営に切り替えていくことです。そのためにどうするかを考えたいから「保護研究会」なのです。

ライチョウの生息地、、、北アルプスや南アルプスの深部に入ってライチョウが本当は何を欲しているかを探るのはとても大変です。アクセスのいいところでばかりライチョウを見てわかった気になってしまうのですが。山小屋のご支援で、なんとか山奥のライチョウを研究できています。

ライチョウをいかに保護したらいいのか一生懸命考えること自体が私達が地球と「うまくやっていく」ことになるのだと訴えるために、こうした地道な研究を進め、ライチョウについて知ってもらいたいと思います。

2022年6月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 黒五

三年寝太郎

3年越しの開花

ベランダで藤を育てるという無謀なことしているのですが。鉢植えで藤を咲かせるのは難しいことのようで。全然咲かないんですね。

育てているのは紫藤と白藤のニ種類で、白藤が実に3年ぶりに咲いたので「咲いたんです!」と写真を見せた知人曰く「これ、紫になるの?」なりません。

藤の花芽は夏季に分化し、剪定の際はその花芽を落とさぬようにせよと物の本には書いてある。けれども、そもそも花芽に分化してなきゃ意味がない。

10年以上前、ツキノワグマが里に降りてきて畑を荒らしまくったことが話題になり、原因は山に食べ物がないからだと考えられ、それはクマが食べているドングリやブナの実が凶作だったからだという話になり。

とある女子が、ブナの冬芽を剥いて、それが花芽になってるかどうか確かめようとした。そんなことを思い出しました。

ブナの木はでっかいので、枝を落とすこと自体が、とても大変。

そして、落としてきた枝に付いている芽を、、、一個ずつピンセットで剥いて、花芽か葉芽か判定すること数百数千。気の遠くなるような作業。

何がドングリやブナの豊凶を作り出すのかは議論があるところですが、枝にみっしりと付いたブナの芽を見て、生命の力強さを感じたとか感じなかったとか。

もしかしたら、ライチョウの食べているものにも豊凶はあるのかもしれません。中部大の上野先生のところでライチョウが食べるクロマメノキの栽培品種を育てているのですが、何がその豊凶を作り出すのか、なんとなくわかるまで何年もかかるでしょうし、証明するにはもっとかかるでしょう。豊作の年は、秋のライチョウの雛の栄養状態が良くて冬越ししやすくなるのではないか、なんて仮説をたてても、確かめるには何年もかかります。

通勤途中に藤を鉢で育てているお宅があって。去年は無茶苦茶奇麗に花を咲かせていて、通りがかるたびに、ちくしょう、いつか見てろよと謎の対抗心を燃やしていましたが、今年ほそのお宅の藤の開花はゼロ。謎です。COVIDー19のせいで、この3年は何にもできていないに等しかったのですが

3年も寝とったらば、3年分の力が出る。

かもしれません。

2022年5月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 黒五

ライチョウのフンから採食植物を特定

 ニュースページにも掲載していますが、中部大学の藤井先生達が進めていた、ライチョウのフンから採食植物を特定するという取り組みが毎日新聞で取り上げられました。

 記事掲載後、一定期間過ぎると全文にアクセスできなくなってしまうので、魚拓は取ったのですが(画像保存すること)、魚拓をここに掲載してはいけませんので、どんな内容だったのかというご紹介にとどめます。

2016年~2018年 富山県北アルプス太郎山周辺にて環境省に許可を得て植物73種を採取し、DNAデータベースを構築。
これに対して2015年~2018年に同地域で採取されたライチョウのフン116個からフンに含まれた植物のDNAを解析して、植物のDNAと照合。
結果、ライチョウが採食した49種3属1科の植物の特定に成功。

 生物の分類は、界・門・綱・目・科・属・種という分類階級を持っていますが、このうち最も細かい種レベルで特定できたということはとてもすごいことです。
 これまで(筆者も含めて)ライチョウの採食物は目視(映像撮影した動画を解析する方法)で行われてきたが、小さな植物や画像から判別できない植物もありましたが、これを補完してくれるものになります。

 これによって、以下のようなことが今後判明すると期待されます。

①より詳細なライチョウの採食植物の季節性
 特定の植物に依らず、その季節季節で栄養価の高いものを選別している可能性

②ライチョウの採食植物の地域性
 棲んでいる地域の違いによって植生も変わるのであれば、同じ時期に異なる地域のライチョウが食 べているものも違うかもしれない。

 ようやく、二ホンライチョウの保全に資する研究成果が出てきたことをうれしく思います。

論文本文へのアクセスは

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0252632

中央アルプスのライチョウ移植事業

保全生態学研究という学術雑誌に、このような論文が掲載されました。

学術提案 中央アルプスにおけるライチョウ移植事業の課題:
北米のライチョウ移植プロトコルおよび IUCN ガイドラインとの比較

長野 康之
新潟ライチョウ研究会、NPO 法人新潟ワイルドライフリサーチ

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/advpub/0/advpub_2031/_article/-char/ja/

ライチョウの移植事業がどうあるべきなのか、論理的かつ科学的に述べられています。

中央アルプスのライチョウの地域絶滅の原因が人間の開発による捕食者の増加にあるとしながら、その捕食者の生息状況の調査を十二分に行わなかったり、ライチョウの生息地としての評価を行わないままにライチョウの移植をしようとしたことなどをかなり鋭い切り口で議論しています。

2022年こそ活動できるか

ドイツの葉書なんだそうで

 びっくりするぐらい何も更新していませんでしたが、あっという間に年の瀬です。更新していないのは活動が滞っているからです。

 実に2年にわたるCOVID-19のせいもあります。私がもし(一般人の立場として)ここに北アルプスに行ってきましたと書いたら、県境またいで移動するなとお𠮟りを受けそうですし、実際問題、それで山小屋でクラスターなんか発生させた日にはということもあります。(この2年間、感染に気を使いながら登山された方々をなんら非難するものではありません。単に私がリスクの高い地域にいるからです)

 また、自身の仕事が忙しくてそれどころではなかったというのもあります。

 2021年の自分自身の仕事で一件、温室効果ガス(GHG・・・Greenhouse Gas)に関わる仕事が舞い込んできました。温暖化温暖化言っていたのが、なぜかGHGという言葉にすり替わったのは、温暖化というと「自然保護団体!」というイメージだったのが、GHGというとなんだかとってもビジネス用語に聞こえるからでしょうか。

 2021年は温暖化の問題が企業ビジネスに本格的に食い込んできた年でした。ノーベル物理学賞にもアメリカの真鍋さんが選ばれたのも象徴的です。

 多くの人がもうGHGの問題と無関係ではいられなくなってきたという強烈なメッセージが、各国から、科学者から出されています。企業の側も、プラスチックを木材、紙に置き換えたり、石炭を使わないように努力したりと懸命さがうかがえます。安く、大量にという生産を考え直して、より環境負荷の低い製品が出てくれば、消費者としての私たちもエシカルに行動することができるようになっていきます。

 2022年にはさらにこの流れは強くなっていくでしょう。

 ということで、来年こそCOVID-19がおさまって、仕事も落ち着いて、山に登って山から自然を考えられたらと思います。

2021年12月31日 | カテゴリー : エコライフ | 投稿者 : 黒五

 日本人は、冬になると忙しい。受験勉強の名残かもしれません。私もこの冬はなかなか大変でした。

 4月になれば、山に出かける余裕も出てきます。

 登山道を歩くとどこからかサクラの花びらが風に流れてきて。あれ、どこだろうと見回してもサクラの木は見当たらないのです。下山して、山を見上げると、霞のように山を覆っています。

サクラ?

 私が大学生の頃。ウワミズザクラという木を教えてもらいました。サークルの先輩いわく「腹筋」(葉脈がエイトパック)。

 その花はまるで試験管ブラシです。

 多様性。これが私達のキーワードです。サクラもソメイヨシノだけではないのです。ヤマザクラ、ウワミズザクラ、オオシマザクラ、ウワミズザクラ、カスミザクラ。桜餅の葉っぱはオオシマザクラ。

 この半年でマイバッグが浸透し、企業の脱プラスチック、脱化石燃料の動きは加速しました。これまでの自然保護は、特定の生物を増やそうとか、囲って保護しよう、あるいは駆除しようという方向でしたが、ここにきてようやく本来あるべき自然保護の姿になってきました。

 多様性を守るためには、私達が私達の利益を追求するだけではダメなのです。利他的な行動が、利他的な行動こそが自己の利益を最大にするのです。と、動物社会学の先生がおっしゃっていて。今、それがとても身につまされます。私達が私達の種を守ろうとするとき、仮想敵を作ってはいけない。

 みんな仲良くするために、私達はどう変われるでしょう?

 今、それが問われています。

 

 

2021年4月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 黒五

奨学金

多分、山はもう真冬の世界

学生さんは時間と体力があるけど金がない。
サラリーマンは金と体力があるけど時間がない。
で、老人は時間と金があるが体力がない。

お金とは、鋳造された自由のこと。
つまり学生のうちに金さえあればやりたいことなんでもできる!

そう、奨学金ならそれができる。
あなたは返し終わりましたか。私はつい先日返し終わりました。

ライチョウ研究しに行くったって、電車代、宿泊費、食費、装備代、どんだけいるのでしょう。その解決方法が奨学金。

月5万円借りて、2年で120万円。それを返すのに、大体月9千円で13年の歳月を費やすんですよ。

まかり間違って、病気したり体動かなくなったり働けなくなったらどうしよう。会社潰れたらどうしようと、コツコツ返して13年。

研究するには金が要る。だから、賢い人はお金集めが上手。いろんな補助金をとってくる。私はそんなに賢くないのでそれは無理でした。奨学金借りてできることしてそれでおしまい。

だったら自前で稼いで、やる気ある若者に投資したほうが早いやね、というわけでサラリーマンになって13年。投資先はどこだー若い子はいねがーと待ちぼうけ。

金だけなら、世代間でやり取りができます。
体力や時間はあげられないけれどお金は老人とサラリーマンが若者にあげられる。
それが、未来への投資ではないかと思うのです。

2020年12月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 事務局

カーボンニュートラル

重い腰があがった。と思いました。

菅首相が2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにすると表明してしばらく経ちましたが、今度はアメリカでバイデン氏が大統領線を制しました。アメリカはパリ協定に復帰する見込みです。

菅首相があのような表明に至ったのは、小泉環境大臣からの報告を受けたからのようで。2050年までのカーボンニュートラルに同意した国は121ヶ国にのぼり、日本はCOP25において(二酸化炭素を排出し続ける国として)集中砲火を浴びました。

まあ、でも、サラリーマンとして、突然石炭禁止などと言われたら確かに困るのです。だからなかなか踏み切れなかったのもわかるのです。でも、首相が言うように、技術大国を誇るならばなんとかしようという気持ちの方が強いのです。

アメリカ大統領戦の結果を受けて、世界はより真剣に温暖化に立ち向かう姿勢を強めていくでしょう。「ライチョウはじめ多様な生物を守ること是即ち人類のため」という素地が固まった気がします。

「レジ袋有料化」に反対の声があがっていたのも、少し時間が過ぎてみればみんな当たり前のように自前のバッグを持つようになりました。

人は変化を嫌う(自分たちが相手に合わせると言い換えてもいいでしょう)生き物ですが、変化への適応力もすごいのです。長らく私たちは自然を改変し、手を加え、自分たちの側に合わせることを強いてきたけれども、ようやく自然の側に合わせる時代になってきました。

私もリタイアするまでのあと30年間、仕事を通じて貢献していければと思います。

2020年11月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 黒五

「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画に対する意見書」

 当会は2020年10月7日「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画に対する意見書」を環境省に送付しました。

 当会は十数年に渡り、科学的根拠のある自然保護活動を模索してきました。
 現在環境省が進めているニホンライチョウの保護事業は甚だ科学的根拠に欠けるものであり、ニホンライチョウおよびその生息環境を損ねかねない行為であると考え、理事会として意見書を送付いたしました。

 送付文書は資料室に掲載しております。

 私たちの目指している保護の在り方について、ご賛同いただければ幸いです。

環境収容力とは

タマゴがあったとして。それをカゴにいれよう。

そのカゴには、普通に入れれば6つのタマゴが入る。ここにアナタが7つ目を入れると、その7つ目はコロンと転がり落ちて床に落ち、割れてしまい、元には戻らない。

さよならハンプティ・ダンプティ。王様が1000人の兵士を集めてもハンプティは元に戻せない。

哀れなハンプティ・ダンプティを作らないためにはどうしたらいい?

よい子は知っている。もっと大きなカゴを作ろう!

環境収容力を、簡単に説明できないかな~と考えていてつい先ほど思いつきました。10年考えてそんなもんか、このとんとんちきめと言われればまあそうなんですが、そんな簡単なことをわかってもらえないのが私のせいかあなたのせいか、そこはまあ置いておくとして、でも、これでわからなかったら、あなたはよっぽどとんちきで、塀から落ちても割れない頑固な人なんでしょう。

タマゴが落ちるなら王様の兵士を使って支えればいい、という強引な人たちは、つまり…ライチョウを中央アルプスに移送したり、ケージで囲ったりすればいいと言うんですが。

10年できますか。あるいは100年?

老いた手でこぼれ落ちそうなタマゴを支え、次はお前達だと子や孫にタマゴを支えさせますか。それっておかしくないですか。なぜ、次代にまでそんなことを強いますか。

よい子は知っているのです。

小さくなってしまったカゴを広げましょう。

王道しかないのです。それは同時に私たちが自然と調和して生きていく道です。それを「共生」と言うのです。

2020年10月2日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 黒五