ライチョウのフン

耽美なフン

9月の或る日のこと。
野生生物を扱っていると、たいていフンを扱うと思われる。シカのフン、クマのフン、ライチョウのフン…となると自分のフンのチェックだって欠かさない。
いつものように流す前に色形をチェックしたところ。

黒い。

説明しよう。自分のウンコの色が、茶色~黄色ぐらいは正常である。
白、黒、赤はいけない。

白いのであれば、胆汁が出ていない。
赤いのであれば、大腸の下部で出血している。つまり痔である。
黒。これもまずい。消化管の上部で出血している場合がある。

胃がんか? 大腸がんか? ああ、保険はいっとけばよかったなどと、頭の中で一通り考えを巡らせたのち。

うん。昨日はイカ墨スパゲッティをおいしくいただいたんだったね。

このように。フンは食べているものによって色形が変化します。
ライチョウの場合も顕著で、写真の紫のフンは紫のものを食べたからで、緑のものを食べると緑のフンが出てくる。ふざけてなんかいない。本当である。ライチョウだってイカ墨を食べたら黒いフンが出るに違いない(そんな日は来ないと思いますが)。

今ぐらいの時期、ライチョウはクロウスゴ、クロマメノキ、ガンコウランなどの果実を積極的に採食します。結果、糞はその種と色味が出てきます。春先はガンコウランの旧葉などを食べているので、硬くて茶色いしっかりしたフン。夏の間は柔らかい葉を食べるので緑色のフン。そして、秋には紫になるのです。
現在、中部大学にて、ライチョウのフンからDNA解析で食べたものを突き止められないかという研究が進行中です。
ライチョウの口元を撮影するのは正確ではありますが、見えてないところで何を食ってるかわかりませんので、そこはこういう研究がカバーしてくれるものと思います。

雨の高山

山小屋の人と昔ばなしをしていて(「もう13年も経ったんすね」「年取ったわー」)必ず言われること。「〇〇君たちは雨の中でも調査に出ていたよね」

出てました。

ただ、山小屋の人たちとちょっと認識が違うことがありまして。
やる気があるから、根性で出てたというよりは、雨の日のデータも欲しかったからというのが正確な所かもしれません。

当時はライチョウを執拗に付け回し(彼らの視界は360°あるので、ばれてないわけはないんですが)、一分おきに行動を記録するという、ストーカー的な調査をしていたのです。

要するに。
好きな人のことは何でも知りたいの。

晴れの日だけ出ていたら、晴れの日のデータしか取れないのです。雨の日のライチョウの姿が分からない。ひょっとしたら、雨の日は雨に打たれながらダンスをしていた、そんなこともあるかもしれない。あるいはハイマツの下でゆっくり読書をしているのかもしれない。

その目で確かめるまで、それはわからないのです。

雨の日に気を付けるべきことは、体温低下です。それから稜線や沢筋は危険。
なだらかな場所、雷から退避できるような場所、鉄砲水がこないような場所で、防水防寒をしっかりしていれば雨の日でも調査は可能です。
ただ…電子機器は注意が必要で。どれだけ防水しても、湿気でやられます。

雨の日のライチョウは。
私の主観で恐縮ですが、のびのびとしているように見えます。奴らは完全防水の鉄壁羽毛で雨をはじくのです。

ライチョウと一緒に草原の中でしゃがんで、雨の音を聴いていた夏を思い出すと、山が恋しくなってきます。

ライチョウと昆虫

皆さん、たんぱく質は好きですか?
私は好きです。というか、ヒトは本能的に、たんぱく質、脂質、炭水化物を求めるようにできてます。

ライチョウさんがどうかというと、もう、ごっつり、たんぱく質大好きです。
基本は植物性たんぱく質かと思いますが、手に入るなら昆虫を食べることがわかっています。

こちらの動画は、雪の上で虫を食ってるとこです。
黒いぽつぽつが虫です。
奴らは、低温になると活動が鈍って動けなくなるんだそうで、雪の上に待ってきてしまったが運の尽き。雪の上で身動き取れずにいるところをライチョウがぱくり。

ライチョウの羽毛はたんぱく質ですし、鳥類はあまり脂肪を蓄えないので、貯蔵エネルギーとしてたんぱく質を必要としているのかもしれません。
ほら、ニワトリもミミズ食べるでしょ。

じゃあ、どれだけ必要なのという。そこが今後の課題ってやつです。

7月立山:雛連れファミリーのハビタット調査実施

2年目としての立山7月調査に10日から20日まで入りました。晴れていたのは1日のみ。あとは霧雨、雨、豪雨。悪天候の2日間はテントにて停滞。寒い初調査となりました。雪渓は初日にはたっぷり着いていましたが、日々急速に融け、最終日には新室堂乗越に上がる登山道の雪はほぼ無くなっていました。
5月の繁殖期下見の際には孵化時期が想定できませんでしたが、観察したい孵化後早めの雛に出会えました。7~9日齢くらいの雛。ライチョウ家族は、雪渓斜面の上の方(稜線に近いエリア)を使っている傾向にありました。昨年は7月末に調査に入ったため、観察した雛の多くが孵化後3週間程度と比較的大きな状態でした。今年は成長過程での利用環境(ハビタット)の理解のために、もう少し早い時期での雛の追跡がしたかったのです。
4年生の本格的な調査はこれがスタート。調査道具と食糧を背負ってのテント生活。ラッキーにも調査前半で親子が追跡できましたが、その後の降雨の寒い中での初めての急斜面での調査と毎日の粗食は辛かったことと思います。怪我なく終れてよかったです。お疲れさまでした。テン場・各小屋・各関係者の皆様、ご配慮を賜りましてありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。(上野)

植生調査風景

立ち上る水蒸気

ハイマツ群落の下にたくさんのミツバオウレンが開花

剣御前への稜線と雪渓

雛の採食に迫る2

ライチョウの雛の採食を調べた人はまだいないので、やりません? と中部大の上野先生に持ち込みまして。
現在進行形で調査研究が進んでいますが、だいぶわかってきました。
結果については、別の所でご紹介できればいいかなと思います。

警戒心ゼロな雛たちは、こちらがじっとしてさえすれば足元まで来ます。
これは許可を得て入林して息をひそめて(丸見え)撮影に成功した物です。
しかし小さいからすぐフレームアウトするし、動きがトリッキーなのです…

とにかく、くちばしが小さい。クロマメノキなんかをつついています。
なんでもつついているように見えますが、つついても食いちぎれなかったりします。
ということは、柔らかい植物の葉が必要なんですね。柔らかい若葉は一般的にタンパク質も多く、これは体を大きくするためにも理にかなっています。

雛の採食に迫る1

ゴーヤチャンプルーが食べたくなる季節ですね。
子供の頃は、ピーマンが嫌とか、ニンジンが嫌とか、ゴーヤなんかもってのほかだったりしませんか。
私はウニとかイクラがダメでした。
でも、今は食べられます。

ライチョウの雛ってどうなんでしょう? 親と同じ物食べてるんでしょうか?

成鳥については、ビデオカメラで口元を狙って撮影したらうまくいったんですが、雛はなー小さいしなー追えないしなーまずは大きいとこからだろーそもそも雛の生態の知見がないし。とやってたのが2005~2007年ぐらいの話です。
それから10年して撮ったのがこちら。
デジカメで撮ったんですが。技術の進化ってすごい。。。
昔のビデオテープのカメラじゃ絶対無理でした。

続きます。

白夜の鳥3

ライチョウの子育ては夏至を過ぎた頃に始まります。一年でもっとも日長が長く、日本でも4時から19時頃まで山で行動可能ですし、ライチョウも明るい時間だけ活動しているのが確認できました。

ただ、日本はこの時期は梅雨で寒いですし、日差しも弱く、雛にとっては十分な採食ができない可能性が高いです。

消化管も小さく、こまめに食べていないと餓死してしまうのは小さな鳥類も同じことですね(だから、夜明けにバードウォッチングするんですよね)。ライチョウも夕方に物凄く沢山ついばむのが確認できています。

夜中はおなかが空くんです。たぶん。

一方、アイスランドでは。明るいので、休んでは食べ、休んでは食べ、を昼夜問わずやっているのかも???
残念ながら海外の論文では、ライチョウを狩って分析するようなものが多く、その行動生態学についてはよくわかっていません。
あちらのライチョウはヒトを見ると逃げるそうですし(ライチョウの天敵はニンゲン)。

しかしながら、日本の高山にいるというだけで、ライチョウにとっての鳥生はハードモードと思われます。暑いわ寒いは狭いわ日長短いわ。。。

甲子園で東北勢は冬場の練習場確保が難しいから、設備のない学校はなかなか勝てないのと同じです。

ちょっと違うか…

白夜の鳥2

一方で…

同種のライチョウの論文を読みあさっていると、アイスランドの湖(ミーヴァトンだったと記憶しています)でライチョウの群に散弾を撃ち込んで捕って分析したよーというような論文があるんですね。
あちらではライチョウは主要な狩猟鳥です。わんさかいるんだそうで。

その論文は何十羽というオーダーのライチョウを狩るのに、何人のグループで何時から何時まで捜索してーという、かなり細かいことまで書いてあるんですが。

朝の3時とか、夜の22時とか、そんな時間に狩りしてんですね。

そう。タイトルで書いちゃってるのでアレですが、
あちらは白夜の国なのです。
夏は夜中でも太陽が沈まないんです!

ということは。

ライチョウも夜更かししし放題?
余談:「はくや」と読むのが元々ですが、「びゃくや」の方がなじみがありますね。私も白夜体験したいです。

続きますー

白夜の鳥1

黒五です。日本で一番ライチョウが見られるサイト目指して邁進中です。

寝苦しい夜、みなさん大丈夫でしょうか?

お宅の犬猫鳥兎等、愛玩動物sも暑くて、お腹丸出しで寝てませんか?(鳥は腹見せませんが)

ライチョウって、夜どうしてるんでしょう、というのを私はつい最近まで知りませんでした。

中部大学の学生さんが調べてくれまして。
ニホンライチョウに限って言えば、夜は一定の場所にとどまるようです。
その間、寝てるのか? 麻雀してるかはわかりませんが、夕刻になるとある場所で動かなくなり、翌朝同じ場所で発見されました。

登山は早出早着が基本。
朝のライチョウを見かけることはあっても、夕刻のライチョウを見ることってほとんどありません。(人間も小屋やテントに入って、ビール飲みだしちゃいますからね!)

続きます!

求愛行動

ライチョウの繁殖期はGWの頃から6月初旬ですが、私たちはこの時期に山に入りません。
これはだいぶ昔(まだ、私に若さがあって、梅雨前に入山していたころ)撮影したものです。
オスが尾羽を広げ、両翼を地面に押し付けるようにして求愛してます。

これが、すげーかっこいい、のかもしれません。

…鳥の求愛行動は実に様々ですが、ライチョウの場合はこんな感じです。