葉でわかる高山植物

アオノツガザクラ

ライチョウの研究というのはライチョウだけ見ていればいいというもんでもなく、例えば、ライチョウが今ついばんだ謎の植物の名前を知らなければいけません。そこまでライチョウさんは教えてくれないのです。
別に、謎の草A、B、C、、、でも構わないんですが、それを論文にしたとき、読む人が、で、それってなんなの? となってしまうわけで。
かといって、大学3年生4年生で高山植物を「葉だけで」同定できる人間はまずいないのです。

<にわかには見分けがつかない植物の例>
アオノツガザクラ―ガンコウラン
 …アオノツガザクラの方が葉が大きく、鋸歯が目立つ

クロマメノキ―クロウスゴ―マルバウスゴ
 …葉が出ている場合 クロマメノキは鋸歯がほとんどなく稜が目立たない。クロウスゴはクロマメノキより稜が目立つ。マルバウスゴは枝分かれが細かく、葉が丸い、鋸歯がある、稜が目立つ。
 …葉が出ていない場合 半ばお手上げ

コケモモ―コメバツガザクラ
 …コケモモの方が葉が大きい。ただし、葉の小さいコケモモもいるので注意。コメバツガザクラは岩礫地に多く、コケモモはハイマツソデ群落に多い。

<お手上げ>
イネ科、カヤツリグサ科、蘚苔類、ササ

高山植物図鑑は「花」で検索します。
花というのは各植物で特徴が出るので、同定しやすいんですね。
ということは、大学3年生の夏に高山でワンシーズン過ごして花と葉と植物名を一致させ、翌年勝負かければいいんですが。


ただいま、就活時期が夏に寄ってきたため、夏場に学生さんが長期で調査に入るのは難しいんだと。
私が学生の頃はGW頃には就活の決着が付いていたので、あとは山籠もり状態だったんですけどね。。。
世知辛い世の中です。

雛の採食に迫る2

ライチョウの雛の採食を調べた人はまだいないので、やりません? と中部大の上野先生に持ち込みまして。
現在進行形で調査研究が進んでいますが、だいぶわかってきました。
結果については、別の所でご紹介できればいいかなと思います。

警戒心ゼロな雛たちは、こちらがじっとしてさえすれば足元まで来ます。
これは許可を得て入林して息をひそめて(丸見え)撮影に成功した物です。
しかし小さいからすぐフレームアウトするし、動きがトリッキーなのです…

とにかく、くちばしが小さい。クロマメノキなんかをつついています。
なんでもつついているように見えますが、つついても食いちぎれなかったりします。
ということは、柔らかい植物の葉が必要なんですね。柔らかい若葉は一般的にタンパク質も多く、これは体を大きくするためにも理にかなっています。

雛の採食に迫る1

ゴーヤチャンプルーが食べたくなる季節ですね。
子供の頃は、ピーマンが嫌とか、ニンジンが嫌とか、ゴーヤなんかもってのほかだったりしませんか。
私はウニとかイクラがダメでした。
でも、今は食べられます。

ライチョウの雛ってどうなんでしょう? 親と同じ物食べてるんでしょうか?

成鳥については、ビデオカメラで口元を狙って撮影したらうまくいったんですが、雛はなー小さいしなー追えないしなーまずは大きいとこからだろーそもそも雛の生態の知見がないし。とやってたのが2005~2007年ぐらいの話です。
それから10年して撮ったのがこちら。
デジカメで撮ったんですが。技術の進化ってすごい。。。
昔のビデオテープのカメラじゃ絶対無理でした。

続きます。

白夜の鳥3

ライチョウの子育ては夏至を過ぎた頃に始まります。一年でもっとも日長が長く、日本でも4時から19時頃まで山で行動可能ですし、ライチョウも明るい時間だけ活動しているのが確認できました。

ただ、日本はこの時期は梅雨で寒いですし、日差しも弱く、雛にとっては十分な採食ができない可能性が高いです。

消化管も小さく、こまめに食べていないと餓死してしまうのは小さな鳥類も同じことですね(だから、夜明けにバードウォッチングするんですよね)。ライチョウも夕方に物凄く沢山ついばむのが確認できています。

夜中はおなかが空くんです。たぶん。

一方、アイスランドでは。明るいので、休んでは食べ、休んでは食べ、を昼夜問わずやっているのかも???
残念ながら海外の論文では、ライチョウを狩って分析するようなものが多く、その行動生態学についてはよくわかっていません。
あちらのライチョウはヒトを見ると逃げるそうですし(ライチョウの天敵はニンゲン)。

しかしながら、日本の高山にいるというだけで、ライチョウにとっての鳥生はハードモードと思われます。暑いわ寒いは狭いわ日長短いわ。。。

甲子園で東北勢は冬場の練習場確保が難しいから、設備のない学校はなかなか勝てないのと同じです。

ちょっと違うか…

白夜の鳥2

一方で…

同種のライチョウの論文を読みあさっていると、アイスランドの湖(ミーヴァトンだったと記憶しています)でライチョウの群に散弾を撃ち込んで捕って分析したよーというような論文があるんですね。
あちらではライチョウは主要な狩猟鳥です。わんさかいるんだそうで。

その論文は何十羽というオーダーのライチョウを狩るのに、何人のグループで何時から何時まで捜索してーという、かなり細かいことまで書いてあるんですが。

朝の3時とか、夜の22時とか、そんな時間に狩りしてんですね。

そう。タイトルで書いちゃってるのでアレですが、
あちらは白夜の国なのです。
夏は夜中でも太陽が沈まないんです!

ということは。

ライチョウも夜更かししし放題?
余談:「はくや」と読むのが元々ですが、「びゃくや」の方がなじみがありますね。私も白夜体験したいです。

続きますー

白夜の鳥1

黒五です。日本で一番ライチョウが見られるサイト目指して邁進中です。

寝苦しい夜、みなさん大丈夫でしょうか?

お宅の犬猫鳥兎等、愛玩動物sも暑くて、お腹丸出しで寝てませんか?(鳥は腹見せませんが)

ライチョウって、夜どうしてるんでしょう、というのを私はつい最近まで知りませんでした。

中部大学の学生さんが調べてくれまして。
ニホンライチョウに限って言えば、夜は一定の場所にとどまるようです。
その間、寝てるのか? 麻雀してるかはわかりませんが、夕刻になるとある場所で動かなくなり、翌朝同じ場所で発見されました。

登山は早出早着が基本。
朝のライチョウを見かけることはあっても、夕刻のライチョウを見ることってほとんどありません。(人間も小屋やテントに入って、ビール飲みだしちゃいますからね!)

続きます!

求愛行動

ライチョウの繁殖期はGWの頃から6月初旬ですが、私たちはこの時期に山に入りません。
これはだいぶ昔(まだ、私に若さがあって、梅雨前に入山していたころ)撮影したものです。
オスが尾羽を広げ、両翼を地面に押し付けるようにして求愛してます。

これが、すげーかっこいい、のかもしれません。

…鳥の求愛行動は実に様々ですが、ライチョウの場合はこんな感じです。

抱雛

過去の写真や動画を漁っていると、10年以上前の私の姿があって白目剥いたりします。
それはともかく、大学4年生の私の卒論テーマは、ライチョウの抱雛(ほうすう)でした。
寒くなれば、おかあさんのおなかの下に雛が潜り込むのですが。寒いったって、晴れてて寒い時も、曇ってて寒い時も、風が強くて寒い時も、雨で寒い時も…寒いも色々だろ、ということで調べてみました。
結果、10分も温まればいいみたいです…で、寒ければ寒いほど、抱雛の頻度が上がる=お母さんの腹の下から出てくる時間が短くなる、ことがわかりました。

え? 当たり前?
でも、それをちゃんと科学的に調べるってのが大事なんです。

育雛初期に梅雨が長引けば、雛の採食時間が十分ではなくなるかもしれないんです。今年は長梅雨でした。ちょっと心配ですね…

ライチョウに必要な物

富士山!

私にとって、8月と言えば富士山です。初めて登ったのは小学生の頃で、以来、夏と言えば富士山というイメージです。

富士山は過酷な山です。
まず水がない。正確に言えば、山頂付近は万年雪があって、火口に池もできているのですが。。。近年は山頂域の永久凍土も後退しているとの報告もありますし、実感として万年雪も量が減ってきている気がします。

そして、植生がない。あまりの強風で、カラマツは這いつくばり、5合目より上はオンタデばかりです。冬は水分が凍結することによる乾燥、夏も保水力の無いスコリア斜面では植物や蘚苔類が十分に生育できないのかもしれません。
(植木鉢の土に富士砂を混ぜて水はけをよくするぐらいですから)

で、ここにライチョウを放ったらという人がいるんですが、こんなところはライチョウにとっては砂漠も同じです。食べ物がないし、隠れる植生もありません。
しばしば勘違いされていますが、ライチョウは高山の鳥ではないのです。たまたま日本の高山が、ライチョウの生存に(辛うじて)適していたから、生き残れたというだけのことで、本来は周北極地域の草原の鳥なのです。高山あることではなく、気温や植生が重要です。

全く同じことが他の山でも言えます。
ライチョウにとって、「必要な物」が失われたら、そこの山のライチョウは絶滅します。
すなわち、今、ライチョウが地域絶滅した山域というのは「必要な物」が欠けてしまっているのです。
それがなんだったか。。。私たちはライチョウに訊いてみなければいけないのです。それが、調査研究をする、ということだと思います。

ここは俺の砂場だ! 2

で、アタシもアタシもとやってきた妹(?)をつつきだす…

ね、幼稚園児みたいでしょ?

野生生物に対する目線というのはいろいろあると思いますし、自由なんですが、私の場合は、私たちとライチョウを重ね合わせることのほうが多いように思います。

彼らと一緒に生きていくためには人間が生き方を変えた方が良いのです。でも、賢いはずの人間だけが自然とのつきあい方を忘れてしまったから、もう一度ライチョウさんに教えてもらうのです。